国際折り紙研究会では毎年夏の3日間合宿特別講習会を開催しています。 対象は主として会員及び各地の定期講習会へ参加している方ですが、 若干名に限り、一般の折り紙愛好者の方の参加も受け付けています。 海外からの受講者もあり、紙の裏打ちの技法など他では経験できない 充実した講習内容は高く評価されています。
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夏の特別講習会は43回と回を重ねました。月例の会を更に集中的に、充実した内容のカリキュラムによって、まとまった学習と作品が仕上りました。 菊川多美子 |
開講 | 基礎折り |
開講は早めに行われ、本講座の概要説明に始まりました。シンガポールのAndrew Limさんは昨年に続いて参加され、皆で歓迎しました。第一日は今回のテーマに沿った授業で基本になる「馬」の折り方二種をしっかりと把握しておくことが主となります。 また今回のテーマにも関わる基礎折りの(A)(B)(C)(D)の理解--原形と折り線、その応用をもう一つのテーマとして「折り紙読本I」をテキストにしました。この本の初版はB6の小さな本で誰にでも買えるようにと、著者の吉澤先生が出版社との難しい交渉の上、出版されたものであることを講師から聞きました。そして当時折り紙のバイブルとされ、外国からの旅行者がこの本を携えて吉澤先生を訪ねて来たこともあったということでした。 正方形、菱形、直角二等辺三角形、正三角形を、原形が変わっても折り線は同じように存在し、各々の特徴をもって、折る対象に対応できる基礎折りですが、整理された図解を折り紙読本Iによって勉強することができます。応用の一例として掲載されている製図を正確に読みとり最も良い形に表現する実習を行いました。 |
裏打ちのデモンストレーション |
裏打ち実習 |
第二日は会期中有効に時間を使えるメインの日です。 恒例の記念撮影を朝食前にすませ講習会場へ集合、朝礼。テーマの「馬」の導入にもなる象徴的な馬の頭部を折り、しぜんにその雰囲気に入るようにしました。また昨日の馬のバリエーションとなる折り方のため、基礎折り(A)を次の作業に入る前に準備しました。 裏打ちという用紙の調整は始めから終わりまでの行程を長時間使えるこの特別講習会などにおいてできることで、吉澤先生の折り紙の独特の技法を学べる分野です。 正麩糊や刷毛などいろいろの道具を前もって用意することがこの作業にとって欠くことができません。裏打ちは画一的に行程を行うわけにはゆかず、目的によって用紙を選びそれぞれの条件に合った方法を考えて進めます。経験を積み、その都度、適切に対処する必要があります。 |
パネル 作品制作 |
馬を制作 |
午後はレリーフのパネル作品(牧場の馬)のため添景として草を配置するため二種を折りました。馬の基本の折り方は昨日勉強した「走る姿」の前のオーソドックスな形です。馬特有の姿のとらえ方、その範囲に納めなければならない部分、微妙な角度や分量について考えなければなりません。吉澤先生から直に指導を受けた人にはそうした事が甦ります。 パネルの構成はテーマをきめてそれぞれの作品の制作と構図することとが相俟って出来ることですからどちらも重要な課題です。 裏打ちした用紙が乾いた頃、この会で作業するためのよい時間帯を選びました。板からはがした紙を、いつもの手順で所定の大きさに裁ちます。折りはじめるまでの紙の扱いは深重に行い、充分に練習した「馬」を制作しました。形を把握してあれば、思った通りの折り線をつけて形づくることができるのが裏打ちした用紙の特徴です。馬の中でも用紙に似合う折り方であり、時間をかけて固定し完成させました。 |
平行折りとジャバラ折り |
平行折りの分割とジャバラ折りについては折り紙読本に掲載され発行当初から読者の関心が高かったようです。機会あるごとに吉澤先生の講義と実技指導の講習がありました。 平行や曲線の畝折りは分割することによって、さまざまな形が可能であるということを、著書にも解説されています。今回は折り紙読本Iの魔法のぼうしを折りました。製図@までの予備の過程は図解されていませんが直に教わったように実習しました。より正確に、そしてすべての折り線に均一に圧力を掛け、明確な畝折り・ジャバラ折りをすることによってその機能で如何に美しい表現ができるかを理解しました。2007年にニューヨークに於けるOrigami USAのコンベンションでもこのテーマで講習しました。 これに関連して世界の折り紙の傾向や現在開かれている展覧会、館知宏氏の「計算折り紙のかたち展」について話がありました。 |
制作品展示・講評・鑑賞 |
第三日のタイムテーブルを少し変更して早々にパネル作品の講評と印をしるす時間帯を設けました。実際に構図する作品の種類や点数が複数あるため、ある程度の時間をかけることは必要です。一つ一つの折り方を確実に、用紙の質や大きさをバランスよく、丁寧に仕上げるという総合的な努力が欠かせないことを講評で痛感しました。 全日程で仕上げた作品を種類ごとに展示し、講評、合評、観賞しました。お互いの作品を観ることは、しぜんに自分を振り返る場でもあります。 |
吉澤章作品を鑑賞する |
参加証の授受は締め括りの行事ですがここではもう一つ、司会者から「吉澤先生の作品鑑賞」を促されました。平行折り、ジャバラ折りの変化はすでに各自で体現したことでもあり、いろいろの分割の方法があることを一部見学、テーマになった「馬」−馬の頭の壁面飾り、走る姿のシンプルなものからリアルへ、正統に立っている様々な姿を鑑賞しました。 日程のすべてを終わり、仕上げた作品を通して、更に楽しく勉強してゆくことが沢山あることを、皆で確認できたと思います。 |
お問い合せは、国際折り紙研究会へ 電話03−3921−5382 |
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