6月22日(金)〜25日(月) 国際折り紙研究会代表 吉澤喜代

Convention会期中のExhibition吉澤作品
New Yorkの六月は年間でいちばん好い季節と聞いています。日本で梅雨の蒸し暑い幾日間かをニューヨーク市では暑い秋のように言われてすごしました。

2007年のConventionに日本を招待国として参加のお誘いをOrigami USAから昨年末に受けました。
会長のMr.Tony ChengとConventionのコーディネーターMs. Jan Polishから特に「吉澤章の折り紙の原点とその歴史」をLecture(講演)するよう提案がありました。

2月頃から講演の内容を考えながら、原稿を書き始めました。書く事柄は多く選択に困るほどですが、訪問国アメリカに関することを主にしました。吉澤章が生きていたらどうするかと考えます。率直に書いておくべきことも、相手のことを思うと遠慮して書くことになってしまいました。
講演のバックとしてDVDに資料を入れる作業もたいへんでした。年代を追って新聞、書簡、その他の印刷物、講演の中に出てくる作品の写真、世界の、特にアメリカの人々との交流の写真など入れたいものがたくさんありました。出発まで相当な日数が準備にかかってしまいました。

6月22日(金)
Teachingのメニュー発表(各自登録)
 作品提出――折り方講習のためのサンプル 2:00pm〜
Exhibitionのため作品展示    3:00pm〜6:00pm

6月23日(土)2:00pm〜3:45pm
 講習(Teaching)吉澤喜代

初めのあいさつと吉澤章の折り紙について

 Theme――ペンギン(Penguin)創作 吉澤章Akira Yoshizawa
 Simple, realistic and concrete
一つのテーマを簡単、写実、具象的な表現と形体の多様性について解説するには、ペンギンはわかりやすい作品として選びました。基礎となる力をもった折り線を理解するには最もよい例です。これからも皆様と続けて研究してゆきたいと思います。
教材 黒柾紙 15cm、18cmその他

6月24日(日)2:00pm〜3:45pm
講習(Teaching)菊川多美子 T. Kikugawa
Theme――魔法の帽子と壷 創作 吉澤章
Magic Hat and Magic Pot
工夫していろいろの形をつくることが出来る
a. 初めのあいさつ
b. 「創作折り紙」p.146、147より解説文。英訳して頂いたのを掲載します。本(日本語)と併せてお読みください。

“Magic Hat and Pot”
Folding this “Magic Pot” is not so difficult, but you can find limitless changes and joy depending on your ideas.
Crossing parallel furrow lines with a right or proper angled line makes
“Serpentine braids” with free expansion and contraction, which is applied to various ways in our daily lives.
Yoshizawa had already introduced the model of “Magic Hat” making full use of an elasticity of papers and enabled folded parts to push in or pull out easily. He developed and shaped up specially the parts of side pleats, and made them into this “Magic Pot”.
This “Magic Pot” was once introduced in the corner of “Chronicle of Play” of Asahi Newspaper. “This model has a fine silhouette with parts of neck, chest, waist and legs. By adjusting the spread of those parts, you can make every possible shape of revolving symmetry. Moreover, you can arrange them into a face of a human or an animal by reversing a part of the belting structure and making a warp on it.”
Here we introduced a part of great variety of “Magic Pots” including the ones contrasted to the shapes of a human’s body or animals in natural world, or these of sophisticated instruments which we use in our daily lives.

実技指導
普通教室では机が小さくて実際に折ることが出来ないので、昨日から教室の変更をお願いしていました。ご尽力の甲斐あって漸く探してもらいました。関係者一同で掃除してピカピカの気持ちよい教室になりました。
FIT(Fashion Institute Technology)のデザイン教室であり、机に一基ずつ照明器具がセットされていたので、折り線が合わせ易くて、よく折ることが出来ました。折りまとめた作品を、工夫しながら折り替えていろいろな形のバリエーションをたのしみました。
教材 クラフト紙とファンシーペーパー(杉綾地模様)、吉澤章が使用するために保存していた紙を長い大型の特別の紙に裁断して提供。

6月24日(日)4:30pm
Exhibition 終了 作品撤去
 会場はいつも人がよく入っていた。会場担当のMrs. V’Ann Conneliusは、吉澤章の作品展示にはこれまでも好いスペースを提供して下さった。

6月25日(月)2:00pm〜4:45pm
Lecture(講演)

Studies on the Origami and the History of Origami developed by Akira Yoshizawa
吉澤章に折り紙の原点と歴史を視る

Lecturer: Kiyo Yoshizawa (International Origami Society)
Class: Monday, June 25
1. How he awakened his interest in Origami
折り紙に興味を持つ動機となったエピソード
2. Origami became his lifework
 「折り紙」畢生の仕事となってゆく
3. Starting spreading Origami world widely
 海外と交流始まる
4. His models were introduced in America
 作品アメリカに渡る
5. He found the original book of “Kannomado”――Kayaragusa
 「寒の窓」原典の発見
6. Some of his lost models in Amsterdam came back to him after 50 years of absence.
 アムステルダム市の展覧会、作品一部還る
7. Becoming known more all around the world.
 更に海外へ――
8. Yoshizawa’s Creative Origami―From the creation to production―
 吉澤折り紙 創作から制作まで
9. How he folded exquisite lines and surfaces. 
 美しい線と面の折り方を伝えるために
10. A heartfelt wonder and a careful observation are the beginning of creation.
 創作は感動と観察に始まる
11. Demonstrations.
 実技について
12. Exhibitions domestic and overseas.
 内外での個展
13. To the people who love Origami all over the world.
 折り紙を愛する皆様へ

前半は2:00pm〜3:30pmとしました。
上記は講演原稿の小見出しです。1.〜7.までの前半は現代折り紙は吉澤章の創作活動によって始まり、折り紙の歴史は共に進行しました。海外との交流を盛んにして、折り紙は世界各国に普及したことは、既にご存知の通りですが、この度はアメリカに焦点を当てて話を進めました。

休憩 3:30pm〜3:40pm

3:40pm〜4:45pmの後半の始めに折り方(Teaching)を2点しました。

ちょう:古典的な評価を受けている「ちょう」のエピソードを話して全員いっしょに折りました。この「ちょう」から波及してたくさんのちょうが折られていました。
かざぐるま:極めてシンプルな折り方です。誰でも子供の頃に戻れます。手の上で廻したり、細い竹ぐしを軸にして廻しながら走って見せた本人は無邪気そのものの姿でした。
8.〜13の後半の話は吉澤章の創作についての態度やテーマの本質を究めることに遅々としながら努力をしていた様子など話しました。
折り紙の真髄に触れるには及びませんでしたが、或るところまでは理解して頂けたと思います。原稿の半分も話せなかったのですが、後から気付いた必要なことをいろいろと追加しました。話のバックとして映像――スライドショウが重要な役割を果たしてくれました。

時間が残ればとしてあった、実技についての希望があり、実演しました。
紙を濡らして折ることはヨシザワの創めた手法(表現技法)としてYoshizawa systemとまで言われています。
更に素材(紙)の調整ということがあります。簡単に言えば、制作するために程よい条件の素材に加工する方法として、紙の裏打ちや合わせ紙をします。糊も現地で作り、手漉和紙に障子紙を貼り合わせ皺が出ないように板に貼るところまでを実演してお見せしました。

これで三日間のClassesは無事に終了しました。
The Ichiyama family、 Mr. and Mrs. Sakamoto、 Ishizukaさん他Conventionスタッフの皆様に感謝いたしております。

25日(月)7:00pm Monday Night Dinner
全日程が終わり、お別れの夕食会がありました。全参加者は560名でしたが月曜日でもあり、残った人は200名ぐらい、Mr. and Mrs. Sakamotoの話では夕食会にこんなに大勢の参加者があったのは初めてとのことです。
招待国からの出席者、私たち日本人の紹介に始まり、他の海外からの参加者が紹介されました。もう何年か前に日本へ来られたMr. and Mrs. Kondoにも大会中ご一緒しました。他にも私たちの会員皆様の知っている方も何人かいらっしゃいました。
吉澤章との関わりがある方はまだまだ多くお声をかけて下さいました。この際会っておきたい人はとMr. and Mrs. Sakamotoが気配りして下さいました。
9歳のときにA. Yoshizawaに会った大学生は深い印象を受けたと話し、友だちは別のクラスを受講したがこの人はLectureを受けて吉澤のことを更に理解できたと言って下さいました。
また、8歳のときシャロッテ市のコンベンションで受けたA. Yoshizawaのクラスの様子をレポートして2等に入賞したと(今日は出席できなかった)お母様が話されたり、今なお慕っていて下さる人が大勢です。これからも一層交流を深めてゆかなければなりません。

6月26日(火)3:00pm〜
Mr. & Mrs. Sakamotoのご招待によりSakamoto邸に伺いました。New York市からハドソン河を渡り、森や林のある住宅地でした。日本人を主として30人余の人たちがコンベンションの後の余暇をくつろいでご馳走になりました。蛍が一つ二つ飛び交う頃にSakamoto邸を辞しました。
なくなったエミコ・クラックナーMrs. Emiko Krucknerさんのことを何かにつけて思い出しました。

6月27日(水)
前会長のMrs. Gilletteから日本人をNew York市と郊外の観光を提案して下さいました。私たち3人は予定があり、別途の行動になりました。
10:30am Origami USA の事務所へChief CoordinatorのMs. Jan Polishを表敬訪問して今回のお礼のあいさつをしました。私たちのClassは受講希望数も多く、受講者の感想として大変好評であったと労をねぎらって頂きました。
オフィスは膨大な資料でいっぱいになっていました。これまで送った吉澤章の展覧会のポスターは、空いているところを探してもと、貼り出されていました。懐かしいような不思議な気持ちがしました。

12:00 JAPAN FOUNDATION(国際交流基金)のNew York事務所に辻本様をお訪ねしてご挨拶とコンベンションで好評であったことを報告致しました。前からお話いただいていた吉澤作品を何点か展示させて頂きました。

作品は飾ってすぐに、今までそこに在ったかのように極くしぜんに調和することはうれしいことでした。日本の(世界の)大切な文化としての吉澤作品のことを相談やご助言を頂いたりしました。

翌28日(木)朝空港へMrs. J. Sakamotoにお送り頂きました。今回の数日間のことを機会あるごとに皆様にはお伝えしたいと思います。

Teachingのメニュー



Theme ペンギンの講習 23日(土)


魔法の帽子と壺-1 24日(日)


魔法の帽子と壺-2




Lecture 25日(月)




観音像 1953年、ボストン市のレクリエーション協会の催しに出品。美術評論家から折り線がよい位置に美しく集中していることを高く評価されたと伝言を受けた。海外に始めて出品した記念となる作品


子雀 千澤骼。先生(故、美術評論家、美術館長)から仏像などを展示する大型のガラスケースに、この小品の一点で充分スペースを専有する力があると言っていただいた。






「ちょう」を折る












Origami USAの会長 Mr.Cheng(中央)とConvention coodinator, Ms. Jan Polish(右に立っている)


大学生のMr. Jason Ku


JAPAN FOUNDATIONにて 27日(水)


JAPAN FOUNDATION所長 辻本様と